移動や待機時間も労働時間になる?

先日行ったセミナー
「介護版・労務管理サバイバル術 指定取り消しとは無縁の就業規則とは?」では、
移動時間に関する労働時間の管理について、が大変お客様の関心の高い問題でした。

事業所を介さずに直接利用者宅を訪問するサービスでは、従業員の労働時間を適正に管理することは困難です。

しかし、この移動時間に対する支払いをしていないと、
賃金未払いとして、労働基準監督署の指導対象となってしまうのです。

どこからどこまでが労働時間?

労働時間=介護サービスを行っている時間じゃないの?
と思っている方が多いと思います。しかし、それは間違った認識で、法律上は次のような捉え方をしているのです。

・労働時間とは、使用者の指揮監督の下にある時間を指し、介護サービスを提供している時間に限るものではない。
つまり、
①使用者が業務に必要な移動を命じ、
②当該時間に労働者の自由利用が保障されていない、

と認められる場合には、労働時間に該当します。

こうした場合、移動時間、待機時間等についても労働時間に該当し、
使用者は適正にこれを把握、管理する必要があるのです。

○移動時間の考え方

(移動時間内に、休憩時間や空き時間が含まれる場合、その時間分は労働時間ではないので除外します)

○待機時間の考え方

待機時間については、使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を命じ、
当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当します。
なお、ヘルパーの移動時間は、介護報酬の算定対象には含まれません。

実際どのように運用すればいい?

○移動時間はどうやって管理するの?
原則タイムカードなどの客観的な記録をとることです。
しかし実際はそれは難しいので、自己申告してもらうやり方が一般的です。
いずれにせよ、重要なのは支払い基準を明確にすることです。

○実際みんなどうしてるの?
上記の方法でその都度費用を計算するのは大変なので、移動手当などの定額支払いにしているところが多いです。
ただし、定額支払いにした場合、超過分は支払の義務があります。
また、その旨を雇入通知書や就業規則へ明記する必要がありますのでご注意下さい。

○移動手当が十分でなかった場合は?
移動手当を払っていない場合と同じく、
(賃金の未払いで)労働基準監督署の指導対象となりますので、ご注意ください。

Q&A ~現場からの質問~

 訪問介護の業務に従事した時間に対して支払う賃金額と、
  移動時間に対して支払う賃金額は、異なってもいいのでしょうか?
 訪問介護の業務に直接従事する時間と、それ以外の業務に従事する時間の賃金水準については、最低賃金額を下回らない範囲であれば、労使の話し合いによって決定す
ることは差し支えありません。


 現在移動費として、300円支払っているが、
  税務署に「実際の額とは違うので、非課税ではなく課税で手当としてくれ」といわれた。これはどうすれば?
 移動手当という扱いにしてください。
通勤費は非課税扱いだが、移動費は賃金(手当)として払われているので課税となります。


 移動手当を支払うように変えた場合、
  これまで支払っていなかったことについてスタッフにどう説明すればいい?
 労使間で問題に発展しないよう調整しましょう。
仮に労働者から支払いを求められた場合、個人間の申し出であれば何年前までという期限はありませんので、全て支払わなければなりません。
しかし法律上(訴訟に発展した場合など)は、過去2年分までが支払い義務となります。


 移動手当込みとして、100円~150円給与を上乗せする形は有効?
 その範囲に収まるのであれば全く問題はありません。
ただ、移動費がその額を超えた場合、後で支払い義務を生じることになる可能性はありますのでご注意ください。

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